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腰痛

腰痛には慢性と急性がありますが、ここでは慢性腰痛の原因、アプローチについての事例をいくつか挙げてみます。

腰痛と椎間板の変性

整形外科学的な見地からの腰痛の原因は、椎間板の変性に起因する腰痛です。椎間板とは、背骨の1つ1つの骨である椎骨の間にあるクッションです。変性とは、組織の組成が変化するという事ですが、椎間板に当てはめてみると、重力や、身体を動かした時の外力や、年齢などの要因で劣化している状態です。具体的には水分が失われ、固く、薄くなった状態です。この椎間板の劣化は不可逆的で、退行変性(たいこうへんせい)と呼ばれます。椎間板の老化と考えるとわかりやすいかもしれません。

次に椎間板の二層構造についてお話しします。椎間板は内部にゼリー状の髄核(ずいかく)、外側に繊維質の繊維輪(せんいりん)があります。

ジャムパンのジャムが髄核で、パンが繊維輪です。この二層構造でクッションの役割をしています。ジャムに相当する髄核は、日常生活の姿勢や動作の中で、圧縮されながら、後方に移動する力が掛かり易くなっており、ジャムの髄核はパン生地の繊維輪を壊しながら後方へ移動します。椎間板には痛みのセンサーである知覚終末が存在しませんが、椎間板の後方にある後縦靭帯(こうじゅうじんたい)には痛みのセンサーである知覚終末が密に存在する為、この後方移動した髄核が、痛みのセンサーを押す事によって痛み、つまり腰痛が起こるという仕組みです。これが突発的で強い痛みとして出た場合は急性腰痛となります。また、ジャムの髄核がパン生地の繊維輪を突き破って飛び出してしまうと椎間板ヘルニアとなります。椎間板ヘルニアの症状は、痛みではなく、脚の痺れとして出ます。

腰痛=腰椎の軸圧✖屈曲

椎間板内で髄核が後方に移動し易くなり、結果として腰痛を起こし易い姿勢、動作を計算式で表してみると

腰椎の軸圧✖屈曲(ようついのじくあつ かける くっきょく)

となります。軸圧とは、軸の中心方向に圧縮する力の事です。ここでいう軸圧は背骨と重力線が一致している状態。立っている状態や座っている状態です。屈曲とは腰を曲げる動作です。例えば、デスクワークなど、腰を丸めて座った姿勢による、長時間の持続です。また、立った状態で腰を曲げる立位前屈、それから立位前屈から上体を起こす動作で荷物などを持ち上げる動作です。

これら、腰椎の軸圧✖屈曲、の腰痛方程式に当てはまる姿勢、動作を避ける為には、軸圧の除圧と、伸展の方針を取り入れているマッケンジー・セラピーが有効です。マッケンジー・セラピーは、髄核の後方移動に起因する急性腰痛には特に有効であるといわれています。詳細は急性腰痛の項をご参照ください。

腰痛と腰椎の伸展方針

マッケンジー・セラピーは一言でいえば、日常生活の中で、なるべく腰椎を伸展させる姿勢、動作を取っていくという方針です。腰椎の伸展とは腰を反らすという事です。伸展とは屈曲の反対の姿勢、動作となります。腰椎の屈曲が腰痛になり易いので、その逆の方針を取るという事です。エクササイズでは、更に軸圧の除圧を行います。これはうつ伏せに寝ている状態になります。うつ伏せに寝た状態で腰を反らすと、軸圧✖屈曲の反対の事をする事になります。つまり軸圧の除圧✖伸展です。これがマッケンジー・エクササイズです。

まとめますと、マッケンジー・セラピーでは、腰を曲げた屈曲が腰痛になり易い姿勢、動作であるから、腰を反らす伸展の姿勢、動作を取り入れるという方針です。特に、腰椎の髄核の後方移動に起因する、慢性腰痛、急性腰痛、椎間板ヘルニアに適応しています。

腰痛と腰椎の屈曲方針

マッケンジー・セラピーと相反する、ウィリアムズ・エクササイズという腰痛体操があります。これは、仰向けに寝て、膝を抱える様に腰を曲げる屈曲姿勢を取るエクササイズです。ウィリアムズ・エクササイズでは、腰痛になり易い姿勢は腰を反らしている伸展姿勢、動作であるから、腰を曲げる屈曲姿勢、動作の方針を取るという考え方です。時系列では、ウィリアムズ・エクササイズが古く、一時期、全ての腰痛に当てはめられていた事があり、髄核の後方移動に起因する、慢性腰痛、急性腰痛、椎間板ヘルニアに対して、ウィリアムズ・エクササイズの方針を取った為に悪化したというケースが多数あったそうです。ウィリアムズ・エクササイズの適応は、脊椎症に伴う脊柱管狭窄症となります。詳細は脊椎症をご覧ください。

腰椎の伸展方針と腰椎の屈曲方針

腰を反らすマッケンジーの方針と、腰を曲げるウィリアムズの方針のどちらを選択するかという判定には、既述の様に、髄核の後方移動に起因する、慢性腰痛、急性腰痛、椎間板ヘルニアにはマッケンジーの方針で、脊柱管狭窄症にはウィリアムズの方針である、という事の他に、腰椎や筋肉の状態を考慮する事も重要となります。

腰椎は少し反っている、軽度伸展という状態が自然の弯曲です。この自然の弯曲を生理的弯曲といいます。生理的弯曲に対して、弯曲の反りが強い状態を過前弯(かぜんわん)といい、弯曲の反りが無くなってしまっている状態を前弯消失(ぜんわんしょうしつ)といいます。

過前弯では、腰を曲げる屈曲姿勢、動作のウィリアムズの方針が有効です。このケースでのウィリアムズ・エクササイズでは、短縮固着し易い、腰部、後側の筋肉である脊柱起立筋群がストレッチされます。

前弯消失では、腰を反らす伸展姿勢、動作のマッケンジーの方針が有効です。このケースでのマッケンジー・エクササイズでは、短縮固着し易い、腰部、前側の筋肉である腹筋群がストレッチされます。

まとめますとマッケンジーの方針とウィリアムズの方針の判別は

1、髄核の後方移動か、脊柱管狭窄症かの判別

2、腰椎の過前弯か、前弯消失かの判別

になります。1と2の判別結果が食い違う事もあります。この時、どちらを優先するか、もしくはどちらも行わず別のアプローチを優先するかは、その時のケースによります。

腰痛と椎間板のクッション性の低下

椎間板に起因する腰痛として、別の原因としては、椎間板そのものの状態によるのではなく、椎間板がクッションとしての機能を失う事により、連動して起こる脊椎関節や筋肉の、歪み、固まりによる事が挙げられます。

 アプローチとしては、椎間板の歪み、固まりの解放です。この事は、椎間板のクッションとしての機能回復であり、同時に、脊椎関節と筋肉の歪み、固まりによる動かし辛さである、筋関節機能不全に対する機能回復でもあります。

テクニックとしてはカイロプラクティックのアジャストメントや、モビリゼーションが有効です。椎間板に対しての操作と、脊椎関節に対しての操作は異なりますので、使い分ける事が重要です。特に椎間板は回旋する動きで痛め易い為、禁忌となります。脊椎関節を無理に回旋させるアプローチを受け続けると、逆に椎間板の退行変性、つまり劣化および老化を加速させる事になると思いますので要注意です。日常生活の中でも無理に回旋させる動き、突発的に回旋させる動きは、椎間板を痛め易いので注意が必要です。ただし、適度な動きであれば、動かす事はむしろ良い事です。

時と共に変化している腰痛の原因への見解

最初にお話ししました様に、腰痛の原因の1つとして、整形外科学的な説明では、腰痛は髄核の後方移動に起因しているという事になっていますが、ヨーロッパの腰痛ガイドラインでは、腰痛の原因として、髄核の後方移動は関係が無いという事になっています。

クライアントより見聞する極端な例としては、整形外科で受診時に、画像診断により、椎間板から飛び出している髄核の画像を見せられて、腰痛の原因はこれであると告げられたというケース。椎間板から飛び出した髄核の画像は、とてもインパクトがあり、恐怖感を覚える事と思います。これが腰痛の原因であると言われれば、そうであると思ってしまうでしょう。しかし、これは少々乱暴な見解で、クライアントに取っても有害となってしまうのではないかと思います。心因性疼痛(しんいんせいとうつう)といって、恐怖感は新たな痛みをつくり出し増幅するリスクがあるからです。

腰痛の原因は、髄核の後方移動や、椎間板ヘルニア的な状態であるという考えは、実は既に古く、実際にはそうでない事が多いです。しかし、現実には、整形外科学的な見地による、髄核の後方移動や、椎間板ヘルニア的な状態に起因する腰痛であると当てはめられて、納得してしまうケースは少なくないと思います。限られた定説の中で症状を捉え、時が止まってしまうと、仮説を含め、進化した理論、アプローチから遅れを取ってしまう事になるでしょう。

腰痛と動かす方針

前項でご説明致しました様に、腰痛の研究では、より最先端である、ヨーロッパの腰痛ガイドラインに於いて、髄核の後方移動と、腰痛には関連性が無いといわれています。

腰痛を含め、症状の原因には多様性がありますので、原因として、髄核の後方移動が全く無いとは言い切れない部分があると思いますが、あまり気にし過ぎなくとも良いと思います。

例えば、腰痛に対しての方針として、腰椎を反らすのが良いか、曲げるのが良いかという事を選定するのも1つの方法ですが、方向に拘るのではなくて、動かしながら状態を良くする事も良い方法だと思います。関節は歪んだ状態で固まっており、筋肉は長さがアンバランスとなった状態で固まっています。この関節と筋肉の固まった状態によって、痛みをはじめ、重だるさ、動かし辛さなどの症状を出しています。この固まった関節、筋肉を動かしながら解放していくという事です。それによって、神経伝達や、血流、体液循環も正常に回復していきますので、それによって更に関節、筋肉の固まりを解放する手助けになるでしょう。また、固まりによる長期間の負担により顕微に損傷した組織の修復にも繋がるでしょう。

例えばキャット・エクササイズは四つん這いの状態で、腰を反らす伸展と、腰を曲げる屈曲を交互に繰り返すという、動きによって腰の関節、筋肉の固まりを解放していく試みです。1つの方針としては、痛い方向と、度合いを避けます。

痛い方向と度合いを避けながら、動かす事で、関節、筋肉の固まりを解放していく試み。この事は腰痛に限らず、関節や筋肉の固まりに起因する、痛み、重だるさ、動かし辛さなどを解決していく上でとても重要な事です。つまり、痛いから安静にするのではなくて、普通に日常生活を送る事、そして適度に身体を動かす事が有効です。

腰痛と負の情動

痛みの項でも記述しました心因性疼痛(しんいんせいとうつう)は、腰痛では特に関与しているといわれています。これは脳がつくり出して、増幅している痛みです。

二足歩行の人間の腰は構造的にも弱く、反面、日常生活の姿勢や動作による負担が大きく、疲れ易く、痛め易い部位です。この様な事情から、様々な原因によって腰痛が発症しますが、この腰痛が慢性化してしまったり、より痛みの強い急性腰痛を発症してしまうと、脳が腰の痛みに過敏になっていきます。この時、脳の深部にある情動の脳である偏桃体(へんとうたい)は、痛みに対して恐怖感や不安感を覚えます。この恐怖感、不安感と共に、脳は腰の痛みに対して警戒する様になります。すると脳は、腰の痛みに過敏になり、痛みを増幅したり、無いはずの痛みをつくり出すといわれています。心因性疼痛は恐怖感などの、負の情動と痛みが連動しているので、痛みに対しての恐怖感、或いは警戒心が結果的に、痛みを増幅したり、つくり出したりする事に繋がり易いといえます。中々難しい事ではあると思いますが、痛みに対しての恐怖感や、警戒心を手放す試みが有効となるでしょう。病気では無いし、腰に何か特別な悪い事が起こっている訳ではないのだと、まずは安心してみて下さい。

インナーマッスルとアウターマッスルの機能

前項でも触れました様に、二足歩行の人間の腰部は構造的にも弱く、日常生活での負担も大きく、疲れ易く、痛め易い部位です。

関節に付着する筋肉を、深層筋のインナーマッスルと、浅層筋のアウターマッスルに大まかに2つに分けて、その機能に着目してみますと、インナーマッスルは関節を保持する機能に優れ、アウターマッスルは関節を動かす機能に優れています。

在りがちなパラドックスは、インナーマッスルの筋力低下により、関節の保持が上手くいかなくなった時、不安定となった関節を、アウターマッスルが保持しようとして固まる状態です。

インナーマッスルの筋力低下を起こしている人が、例えばスケートリンクに立った時に、上手く立てないのはインナーマッスルの筋力低下によって関節の保持が上手くいっていないからです。更にスケートリンクで立ったまま、上手く動けないのは、不安定となった関節を、アウターマッスルが保持しようとして固まり、アウターマッスルの本来の機能である、関節を動かすという機能を発揮出来ないからです。フィギュアスケートのプロがスケートリンクで華麗に動く事が出来るのは、インナーマッスルが関節を保持する機能を発揮し、アウターマッスルが関節を動かすという機能を発揮しているからです。

腰痛とインナーマッスルの筋力回復

インナーマッスルが筋力低下を起こし、関節の保持が上手くいかず、不安定となった関節を保持しようと、アウターマッスルが固まっている場合、アウターマッスルは関節の保持の機能には不向きである為、関節の保持は上手くいきません。アウターマッスルは固まり、内部の関節は不安定のまま、そしてインナーマッスルも筋力低下を起こしたまま痛め易い状態となっています。

この場合、アウターマッスルの固着を解放しても、不安定な関節を保持しようと、すぐにアウターマッスルの固着は形成されてしまいます。この場合のアウターマッスルの固着は、不安定な関節と歪みに対しての防御収縮です。

ですのでこの場合はインナーマッスルの筋力回復が重要です。シンプルな方法は筋トレです。インナーマッスルの筋トレには、アイソメトリックスが効率的で、適していると思います。アイソメトリックスというのは等尺性収縮の事で、筋トレ時に筋肉の長さが変化しない筋トレ方法です。例えばダンベルを持って動かさずに保持する様な方法です。有名な所では、ブルース・リーが率先して取り入れていた筋トレ方法です。

腰部では、前側のインナーマッスルが筋力低下を起こし易く、後側のアウターマッスルが固まり易くなります。前側のインナーマッスルは大腰筋や腹横筋などで、後側のアウターマッスルは脊柱起立筋などです。筋トレが必要となるのは、大腰筋や腹横筋です。

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