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椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアの原因、アプローチについての事例をいくつか挙げてみます。

髄核の後方移動と脱出

背骨を構成する1つ1つの骨を椎骨といいますが、椎間板は、この椎骨と椎骨の間に存在する背骨のクッションです。二層構造をしていて、内部にゼリー状の髄核(ずいかく)があり、外部に、髄核を包む様に繊維組織である繊維輪(せんいりん)があります。椎骨と椎骨の間にジャムパンが挟まっているイメージです。ジャムパンを強く圧迫すると、ジャムがパン生地を突き破って、外に飛び出ると思いますが、この現象が椎間板ヘルニアです。医学用語で、ヘルニアといったら脱出するという意味があります。本来、居るべき場所から脱出してしまう現象です。脳が何らかの圧迫を受けて本来居ない隙間に脱出していれば脳ヘルニア。胃の入り口である噴門が胸部に脱出していれば裂孔ヘルニア。髄核が繊維輪から脱出していれば椎間板ヘルニア。ここでは椎間板ヘルニアについて扱います。

椎間板の内部で、髄核には、重力により圧縮されながら、後方へ移動する様な圧がかかりやすくなります。典型例では、立位で腰を曲げた状態から、腰を伸ばしながら荷物等を持ち上げる動作で、髄核には、後方へ移動する圧がかかります。椎間板内の前方の圧がより高く、後方の圧がより低い為に、髄核は、圧が低い後方へ逃げようとします。人体の進化の過程、人体の構造上、そして普段の生活の動作で、髄核には、後方へ移動しようとする圧がかかっています。

ここで再び、ジャムパンに例えてみます。ジャムは後方へ少しづつ移動しながら、パン生地を破っていきます。ジャムがパン生地から脱出するとヘルニアとなります。しかし真後ろにある後縦靭帯(こうじゅうじんたい)の壁は分厚く、この壁を突き破って脱出する事は出来ません。その為、より脱出し易い斜め後ろに、髄核は脱出します。右斜め後ろか、左斜め後ろか、どちらか片側の、より脱出しやすい側に脱出します。そしてこの位置に存在するのが末梢神経の根本である、神経根です。

この様に、ジャムパンのジャムに相当する髄核が、ジャムパンのパン生地に相当する繊維輪から脱出し、神経根を圧迫する状態が椎間板ヘルニアです。

椎間板ヘルニアの好発部位

椎間板ヘルニアには、頚椎ヘルニア、胸椎ヘルニア、腰椎ヘルニアがありますが、好発部位は腰椎ヘルニアです。好発部位とは起こしやすい部位という意味ですが、腰椎は物理的負荷が大きく、ヘルニアを起こしやすい部位です。ここでは腰椎ヘルニアにスポットを当てます。

立った状態で、腰を曲げただけで、てこの原理により腰椎には大きな負荷がかかります。この時、髄核にかかる負荷は圧縮されながら後方に押し出される様な負荷です。立った状態で腰の曲げ伸ばしの動作によって、重い荷物を持てば、負荷は更に大きくなります。腰椎ヘルニアの好発部位のランキングでは

1位 L4-L5間

2位 S1-L5間

3位 L3-L4間

です。LはLumbar spine(ランバー スパイン)の頭文字で腰椎の事です。番号は腰椎の上から順番に付けられており、L4-L5間とは、第4腰椎と第5腰椎の間にある椎間板という意味になります。SとはSacral(セイクラル)の頭文字で仙骨の事です。仙骨は骨盤の真ん中にある骨で、背骨の土台となっています。S1-L5間とは仙骨と第5腰椎の間にある椎間板の事です。この様に腰椎ヘルニアは腰椎の下部に起きやすく、立位で、腰椎を曲げ伸ばししたり、その様な動きで荷物を持ち上げる等により腰椎の下部に負担がかかる事がわかります。

腰椎ヘルニアは、重い荷物を持つ等の、椎間板への物理的な負荷により、椎間板内で、髄核が後方に移動し繊維輪から脱出する現象です。比較的、若い男性に起きやすいのは、この様な事情があるといわれています。肉体労働をしていて重い荷物を持つ機会が多い、等といった事情です。

椎間板ヘルニアによる、痺れ、筋力低下

椎間板から脱出した髄核を、ヘルニア塊(ヘルニアかい)といいますが、ヘルニア塊が神経根を圧迫する事により、起こる症状は痛みではなく、痺れ、筋力低下です。腰椎の椎間板ヘルニアでは、下半身の痺れ、筋力低下が起こります。また、これらの痺れ、筋力低下は、片側のみ起こります。ヘルニア塊は左斜め後ろか右斜め後ろの、どちらか片側に脱出するからです。

痺れという症状は、感覚麻痺を伴っており、その為、皮膚の感覚が鈍くなります。靴を履いたまま、靴の底を引っ掻いても、引っ掻かれている感覚はわからない様に、本来、鋭い感覚を認識する刺激を、鈍い感覚として認識したり、触られても触られているという感覚が無くなったりといった具合です。

L4-L5間の椎間板ヘルニアでは、主に太ももの前側の外側(斜め前外側)と、すねの前側の内側(斜め前内側)に痺れ、感覚麻痺が出ます。

S1-L5間の椎間板ヘルニアでは、主に、すねの前側の外側(斜め前外側)に痺れ、感覚麻痺が出ます。

L3-L4間の椎間板ヘルニアでは、主に、太ももの前側の内側(斜め前内側)に痺れ、感覚麻痺が出ます。

個々の感覚神経が支配している、皮膚感覚の個々の領域をデルマトームといいます。ビルで例えると、エレベーターで4階で降りた神経は4階のフロアを支配しているイメージです。デルマトーム、つまり皮膚感覚の支配領域も、背骨の、個々の出口から出る神経根の高さに、おおよそ比例しています。神経根が圧迫される事によって、対応する皮膚感覚の領域に影響が出るという訳です。

筋力低下は

L4-L5間の椎間板ヘルニアでは、主に前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の筋力低下となります。この場合、かかと歩きが出来なくなります。つま先を持ち上げられなくなる為です。

S1-L5間の椎間板ヘルニアでは、主に腓腹筋(ひふくきん)の筋力低下となります。この場合、つま先歩きが出来なくなります。かかとを持ち上げられなくなる為です。

L3-L4間の椎間板ヘルニアでは、主に大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力低下となります。この場合、椅子に座った状態からの、立ち上がりが出来なくなります。太ももの前面側に力が入らなくなる為です。

腰椎ヘルニアによる症状の有無

既述の様な、腰椎ヘルニアによる、下半身の痺れ、筋力低下は、必ずしも起こる訳ではありません。腰椎ヘルニアがあっても無症状という事は、少なくありません。腰部の画像診断を受ける方は、例えば腰部や、下半身に何らかの症状があって画像診断を受診する訳ですが、無症状の方が腰部の画像診断を受診するという事は、まず殆ど無いでしょう。そこで仮に、無症状の方が腰部の画像診断をして、腰椎ヘルニアの有無を診た時に、大多数の方が腰椎ヘルニアの状態であるそうです。この事は例えば、単純Xーray(俗にいうレントゲン)よりも高度な画像診断装置であるMRIの登場により、腰部や下半身に無症状のクライアントに、腰椎ヘルニアが確認された事例が多数あったという事に基づいています。画像診断装置について付け加えますと、単純X-rayは、半固体半液体のゼリー状の髄核を明確に映し出せませんが、MRIはゼリー状の髄核を明確に映し出す事が出来ます。

以上の様に、腰椎ヘルニアによって、必ずしも、下半身の痺れ、筋力低下が起こるという訳ではありません。また、逆のケースでは、下半身の痺れ、筋力低下は、腰椎ヘルニア以外の原因でも起こり得ます。

今回、腰椎ヘルニアにスポットを当てていますが、腰椎に次いで頚椎もヘルニアの好発部位です。頚椎ヘルニアの場合の症状は、主に腕や肩に、痺れや筋力低下が起こり易いです。

腰椎ヘルニアへのアプローチ

椎間板は白い色をした組織で、その理由は毛細血管が無い為です。椎間板の様に、大きな負荷がかかる場所には毛細血管が存在しません。もし毛細血管が存在していたら、内出血し易いでしょう。この様に負荷の大きくかかる場所では、同時に、その組織自体が、ある程度の柔軟性を持ちながら、頑丈に出来ています。所が、一度損傷すると治りにくいという特徴もあります。損傷した組織は、一度壊してつくり変えられます。これが新陳代謝ですが、組織を壊す解体業者と、組織をつくり変える建築業者は、毛細血管を通ってやってきますので、毛細血管の通っていない椎間板は、その新陳代謝が有効に働きにくく、また完治しにくい組織であるといえます。それは例えば、髄核が破った繊維輪です。一度破られた繊維輪は完治しにくく、髄核は一度脱出したルートで再度、脱出し易くなります。これが腰椎ヘルニアが再発し易い理由の1つですが、加えて腰椎椎間板は頚椎や胸椎より物理的な負荷が大きい場所であります。

最近では、手術をするという事が無くなってきていると思いますが、やはり、前述の理由で完治しにくく再発し易いといえるでしょう。

さて、脱出してしまったヘルニア塊は、体内でどう処理されるのでしょう。本来居るべき場所でない場所から脱出する現象がヘルニアである、と記述しました。そして本来居るべき場所でない場所に存在する物を、食べて除去する免疫細胞が居ます。貪食細胞(どんしょくさいぼう)という意味のマクロファージです。繊維輪から脱出した髄核は、マクロファージに食べられて、綺麗に除去されます。期間は三か月程といわれています。その間に、新陳代謝によって破られた繊維輪は修復されます。しかしながら新陳代謝が働きにくい為、応急処置的な状態で維持されやすいでしょう。

この体内での腰椎ヘルニアの修復期間の間、やはり腰に負担となるような、立位での腰の曲げ伸ばし、この様な動きで荷物を持つ、腰を回旋させる等、腰に負担となる動きは禁忌です。膝に問題が無ければ、膝の屈伸を使った動き、手を補助として使う等、腰の負担を軽減する動きが必要です。

また腰椎ヘルニアに於いて、特に立位で腰を曲げると髄核は後方に移動しやすくなります。逆に、うつ伏せで腰を反らすと髄核は前方に戻ろうとします。この様な原理に基づいた、うつ伏せで腰を反らすエクササイズであるマッケンジー・エクササイズが有効であると言われています。

加えて重要な事は、インナーマッスルを鍛えて、腰部を支える事。例えば、大腰筋や、腹横筋の筋トレは重要です。

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