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炎症

炎症時に働く免疫細胞

炎症のお話をする前に、免疫細胞のお話を少しします。免疫細胞はウイルスや細菌などの、身体に取って有害となる外敵をやっつけたり、または自身の身体の内部で発生する、有害な細胞、例えばガン細胞などを、内部の敵とみなしてやっつけたりする細胞ですが、身体を形成する組織が損傷した時の修復過程でも、免疫細胞が働きます。損傷する原因は、どこかに身体をぶつけた、等の外部からの物理的な原因、無理な動作をした時に内部で起こった物理的な原因、化学物質による原因、細菌やウイルスによる原因。様々にありますが、この様な原因による組織の損傷を修復する過程で、その修復を迅速にする反応、細菌やウイルスを死滅、除去する反応、これが炎症です。ここでは主に前者の修復過程について記述していきます。以下に、炎症時に働く免疫細胞の種類と概要を記します。

 

・好中球(こうちゅうきゅう)  好中球は、主として血管内を巡回して、細菌を捕食します。一部の好中球は、炎症時に血管外に出て、細菌などの殺菌、捕食や、組織の損傷によって死滅した細胞を食べて処理します。また好中球の他に好酸球(こうさんきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)の3つを合わせて顆粒球(かりゅうきゅう)といいます。顆粒球の中で好中球の数は90%以上を占めています。

 

・単球(たんきゅう) 単球は、主として血管内を巡回して、細菌とウイルスを食べます。ウイルスは毛細血管の壁を通り抜けられる為、血管内のウイルス限定で単球によって捕食されます。

 

・マクロファージ マクロファージは単球が毛細血管の壁を通り抜けた際にアメーバ状に変身した姿です。単球はマクロファージに変身して血管外に出る事が出来ます。マクロファージは血管外のウイルスを食べたり、捉えたウイルスをヘルパーTリンパ球に見せたりします。これを抗原提示(こうげんていじ)といいます。抗原提示によって適応免疫(てきおうめんえき)が発動しますが、ヘルパーTリンパ球や適応免疫のお話は別項を設ける事にしますので、ここではスキップします。また、マクロファージは、組織の損傷により死滅した細胞を食べて処理する役割を果たします。

 

以上、主に3つの免疫細胞について挙げてみましたが、ここでは物理的な原因によって起こる損傷と、それに伴う炎症についてお話しします。まず、組織の損傷によって死滅した細胞を修復するにあたり、その死滅した細胞を貪食(どんしょく)して解体作業をする必要があります。その実働部隊が、血管外に出た好中球とマクロファージです。好中球とマクロファージは個々に解体作業の現場へと向かいます。この細胞単位での個々の独立した移動を遊走(ゆうそう)といいます。

炎症による細胞修復の加速

組織の修復には死滅した細胞の解体作業が必要で、その実働部隊である好中球とマクロファージを、解体作業の現場に迅速に呼び込み、迅速に作業する為に、毛細血管を拡張する必要性があります。毛細血管の壁は細胞1つ分の薄い壁で出来ており、尚且つ細胞と細胞の間には間隙(かんげき)が存在しています。間隙とは毛細血管の壁のすき間の事で、この間隙から、血液の液体成分である血漿(けっしょう)が滲出(しんしゅつ)し、そして回収されます。滲出という言葉は解剖生理学では、液体成分がにじみ出る事を指します。血漿が血管外に出ると間質液または組織液と呼ばれます。血管外の大多数の細胞は、この間質液に浸っています。この液体は俗にいう体液です。血漿の滲出と回収によって間質液の循環が起こります。間質液は栄養と酸素を細胞に送り、そして老廃物と二酸化炭素を回収します。さて、免疫細胞にお話を戻しますが、好中球とマクロファージも毛細血管の間隙から血管外に出てきますので、好中球とマクロファージを、解体作業の現場に、迅速に呼び込み、迅速に作業する為の、毛細血管および毛細血管の間隙の拡張である訳です。

炎症時に働くホルモン

ホルモンとは、血液中に分泌(ぶんぴつ)される情報伝達物質です。また血液中に情報伝達物質を分泌する事を内分泌といいます。血液中に分泌されたホルモンは、血液中を流れ、特定の内臓、器官、組織に、特定の作用をします。つまり各ホルモンとは、それぞれに特定の命令文が書かれた手紙で、その手紙が血液中を移動し、特定のポストに届けられ、特定の人がそれを読み、命令を実行するというイメージです。神経と対比してみますと、神経は電話や電子メールで、ホルモンは手紙であり郵便です。共通点としては命令文のやり取りと、命令に従った実作業のやりとりです。この様な情報伝達に於いて、神経回路を使った情報伝達を電気情報、血流や体液循環を使った情報伝達を液性情報といいます。

ホルモンの分泌や受取り、または分泌のストップなどの制御の中枢は、下垂体(かすいたい)で、下垂体は更に、脳の一部である視床下部(ししょうかぶ)によって制御されています。これら下垂体と視床下部によってホルモンの内分泌系はフィードバック制御されていますが、それとは別に、個々の内臓、器官、組織、細胞同士が連携して、中枢の制御装置を介さない制御も行われています。

さて、炎症時には毛細血管の拡張が必要ですが、この命令文が書かれたホルモンがプロスタグランジン、ヒスタミン、ブラジキニン等です。プロスタグランジンは細動脈を拡張させます。細動脈とは毛細血管への入り口です。ヒスタミン、ブラジキニンは毛細血管を拡張させます。結果、毛細血管の血流量が増えて、毛細血管の壁に存在する間隙が広がります。この様に炎症作用を引き起こすホルモンを炎症メディエーターといいます。炎症メディエーターによる炎症の発動および、炎症の一連の制御は、個々の器官や組織、細胞間で行われており、これもまた自然治癒力、恒常性の一端であり、自然治癒力や恒常性は、中枢である脳の制御以外でも、個々に制御され働いているという事でもあります。

炎症による損傷した組織の解体と再生

毛細血管と、毛細血管の壁の間隙が拡張する事により、血流量が増し、毛細血管の間隙から流出する好中球や、マクロファージの流出量は増加し、損傷した組織、死滅した細胞の解体、除去作業を加速させる事が出来ます。好中球は炎症初期に主として作用し、次いでマクロファージが主として作用します。そして組織の再生は、新陳代謝によって行われますが、新陳代謝には、高分子を分解してエネルギーをつくり出す異化(いか)と、小さな分子を合成して細胞や組織をつくり出す同化(どうか)という反応があります。同化の反応にはエネルギーが必要で、このエネルギーには、異化によってつくり出されたエネルギーが使われます。よって、新陳代謝とはエネルギーと組織再生の両方を同時に生み出す営みであるといえます。炎症とは部分的に、この新陳代謝を上げる反応でもあります。

そして組織を再生する為に必要な物資は、間質液によって運ばれます。拡張した毛細血管の間隙から流出した血漿は増加し、結果、血管外へと流出した血漿は間質液となり、この間質液の量、そして対流が加速します。これにより組織の再生の営み、すなわち新陳代謝が上がり組織の再生を加速させます。この様に、炎症の作用によって損傷した組織の解体と再生が速やかに行われます。また、炎症によって起こる症状は、発赤(ほっせき)、熱感(ねっかん)、腫脹(しゅちょう)、痛み、等です。発赤とは、炎症部分が赤みを帯びる事です。発赤の原因は、毛細血管の拡張によります。熱感とは、炎症部分が熱を帯びる事です。熱感の原因は、血流量の増加と、好中球やマクロファージが放出するサイトカイン等の発熱物質等によります。腫脹とは、炎症部分が腫れて膨らむ事です。腫脹の原因は、毛細血管の拡張した間隙から血漿が大量に流出し、血管外の間質液の量が増える事によります。痛みの原因は、腫脹による水圧の増加、そして知覚終末への圧迫の刺激と、炎症メディエーターの中の特にブラジキニンの、知覚終末への化学的な刺激等によります。知覚終末とは痛みのセンサーです。

炎症時の冷やす方針と温める方針

炎症は、痛み等のつらい症状を伴いますので、悪いイメージを持ってしまいがちだと思いますが、損傷した組織を迅速に修復する為に起こる反応ですので、炎症自体は有益な反応だといえるでしょう。しかし、損傷した直後は、炎症の反応が大きく出てしまい、痛み等も増大しやすく、更には、炎症の反応が増大し過ぎてしまうと、周辺の正常な組織までもが死滅してしまう事態にもなり得ます。良かれと思って起こった反応が行き過ぎて裏目に出てしまうという事態です。この様な事態を回避する為に、組織を損傷した直後は即、冷やす事が有効でしょう。冷やす事によって炎症による痛み、炎症の過度な増大を防止する事が出来ます。その後、炎症の痛みが治まってから、温める方針に切り替える事が、炎症のマイナス要素を防止しつつ、修復をより迅速に行う事の一助になるでしょう。

目安として、炎症の反応、特に痛みは、多くのケースで、損傷してから3日以内でピークを迎え、1週間以内にある程度収束します。長くても通常は2週間以内に収束するでしょう。ですので冷やす方針は、まずは3日くらいを目安にすると良いでしょう。損傷してなるべく早く冷やす事が重要ですので、冷やす方針をあまり長引かせる必要性は無いでしょう。また、炎症が軽い程度であれば、冷やさずに様子を見ても良いと思います。この場合も頃合いを見て、途中から温める方針でも良いでしょう。温めた時に炎症の痛みが増大しないという事が目安になるかと思います。炎症の痛みは感覚的に嫌な痛みだと思いますが、感覚的に痛気持ちいい感覚になってきたという事も温める時期の目安となります。

また、損傷による炎症の初期では、固定と安静も必要です。この固定と安静も、頃合いを見て、動かす方針に切り替える必要性があります。動かす事、普段の生活を送る事が、痛みの増大を防止して、修復も早まります。固定と安静から、動かす方針に切り替える時期は、前述の様に3日、もしくは1週間程度を目安にすると良いと思います。または、前述の様な痛みの出方を目安にするのも良いと思います。感覚的に、炎症の嫌な痛みが消えた頃合いが目安です。

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