℡ 03-6276-7630 ☚スマホ、タブレットはタップ♪

痛み

知覚終末と侵害刺激と痛覚

身体に於ける痛みとは、脳がつくり出す痛覚です。ここでは、痛覚の発生のメカニズムのお話をします。まず始めに、神経のお話をします。神経とは、身体の内部の電気回線ですが、この神経を、運動神経、感覚神経、自律神経の3つに分類してみます。まず運動神経は、脳が筋肉と関節を動かす指令を出した時、その指令を伝える神経です。感覚神経は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚等の感覚を脳に伝える神経です。自律神経は内臓の機能等、意識的に動かせない領域で生命維持と生命維持の補助として機能させる為の指令を伝える神経です。

さてここでは2つ目の感覚神経にスポットを当てたいと思います。痛いという感覚、痛覚もまた感覚神経によって脳に伝えられます。感覚神経には途中で行き止まりになっている所があります。道路で例えると、環状線の様にループする事もなく、合流や分岐をする事もなく、何かしらの施設に繋がっている事もなく、ただ途中で途切れている行き止まり。道路ではこの様な行き止まり箇所は、あまり無いかもしれませんが、感覚神経では、行き止まり箇所が多数存在しています。この行き止まり箇所を「知覚終末」と呼びます。この知覚終末こそが痛みのセンサーであり、知覚終末に圧迫や刺激が加わると、これが痛みの元となる信号に変換されます。これを「侵害刺激」と呼びます。侵害刺激の電気信号が感覚神経を伝わっている段階では、まだ痛みを感じません。侵害刺激が脳に伝わり、脳が「痛覚」に変換した時、初めて人は「痛い」と感じるのです。

疼痛閾値

疼痛閾値(とうつういきち)。これもまた聞いた事が無い言葉だと思いますが、痛みの感度と考えて下さい。もう少し詳しくお話ししますと、痛みの受け皿となっており、受け皿が大きければ、そのお皿に乗せられる料理の量が同じであれば、お皿に対しての料理の量の割合は小さくなり、受け皿が小さければ、そのお皿に乗せられる料理の量の割合は大きくなります。お皿が、疼痛閾値であり、料理は、痛みの元となっている侵害刺激です。計算式で表すと

侵害刺激/疼痛閾値=痛み

となります。分子が侵害刺激で、分母が疼痛閾値。計算結果が痛みです。

つまり、疼痛閾値が高ければ、痛みの感受性が低くなり、結果、痛みのレベルが下がります。疼痛閾値が低ければ、痛みの感受性が高くなり、結果、痛みのレベルが上がります。疼痛閾値は、先天的な個人差があり、また身体の状態や精神状態によっても変化します。

よく「神経が図太い」という言葉を見聞しますが、「痛みに鈍感」という意味では神経学的に正しいといえるでしょう。

神経障害性疼痛

痛みの発生と、疼痛閾値が下がる要因として、もう1つ挙げておきます。最初に記述しました様に、痛みのセンサーを知覚終末といいます。この知覚終末は別名を、侵害受容器とも呼びます。記述しました様に、知覚終末、すなわち侵害受容器への侵害刺激によって発生した痛みを、侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)といいます。

知覚終末とは感覚神経の行き止まりですが、それとは別に、知覚終末から脳へ向かう途中経路で痛みを増幅させたり、通常は、痛みのセンサーではない場所で、侵害刺激を感知する事により発生する痛みを、神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)といいます。痛みをより感知する為に、感覚神経が知覚終末の根を伸ばし数を増やす反応や、感覚神経が活性化し、侵害刺激を伝え易くする事により、脳で感じる痛みを増幅させたり、電気回線である神経を覆っている絶縁性の被覆が、何らかの原因で損傷した場合、その損傷個所で侵害刺激を感知したり、または感覚神経が切断された場合、その切断箇所で侵害刺激を感知し、痛みの発生となります。これらは、通常では侵害刺激を感知しない箇所に発現した痛みのセンサーとなっています。例えば切断箇所が痛みのセンサーとなった場合の極端な例では、切断箇所が完全に切断されて無いはずの腕が痛い、という現象も、切断箇所に発現した痛みのセンサーからの入力によります。

まとめますと、神経障害性疼痛とは、感覚神経が活性化して侵害刺激が伝わり易くなる事で、知覚過敏、痛みの増幅となります。疼痛閾値が下がる、ともいえます。

それから、通常の痛みのセンサーである知覚終末以外の、神経の途中経路で痛みのセンサーが発現します。

神経障害性疼痛の原因は大まかには、感覚神経への物理的な損傷、持続的な物理的圧迫や化学的な刺激でしょう。

心因性疼痛

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛と、もう1つ、心因性疼痛(しんいんせいとうつう)について記述致します。心因性疼痛は、脳が、情動と共に痛みをつくり出し、増幅する痛みであるといえます。

痛みという感覚は、脳がつくり出す感覚です。そして痛みという感覚をつくり出す、脳の領域は、限定的に特定出来ず、より全体的で、表層部だけでなく、深部の原始的な脳も含まれます。原始的な脳は、本能的な脳の領域です。その中に偏桃体(へんとうたい)という器官があり、別名を情動の脳と呼ばれます。偏桃体は、理性的な判断とは無縁で、物事に対して、生きていく上で、必要か不必要であるか、有益か有害であるかの損得勘定を自動的に喚起します。この損得勘定を喚起する時に情動を伴います。例えば、不必要で有害である物事を回避する為に、不快感、恐怖などの情動を喚起するという事です。脳がつくり出す痛みには、実は、この偏桃体が大きく関わっている様です。

脳で痛みを感じる時に、情動の脳に繋がる神経が興奮状態になり、偏桃体もまた興奮状態になります。この興奮状態は、偏桃体が不快感や恐怖を感じる時と同様の反応となります。不快感や恐怖などの負の情動と、痛みが連動しているという事です。

例えば、身体のある部分に、何らかの原因によって痛みを感じた時、痛みと共に、情動的な恐怖を感じます。そして、痛みの原因が解決され、それによって一次的な痛みは消失します。しかし、恐怖感という警戒心と共に、偏桃体および偏桃体へ繋がる神経が、その場所の痛みに、敏感になって、その後に起こる些細な痛みを恐怖感と共に増幅したり、無いはずの痛みを恐怖感と共につくり出したりします。

神経には、可塑性(かそせい)といって、身体の内部または、外部的な刺激や情報に対して順応し、構造的、機能的に形を変化させる性質があります。偏桃体や偏桃体に繋がる神経が、痛みや恐怖感に対して過敏になる、もしくは痛みや恐怖感をつくり出すという形態でもって順応する事は、痛みや恐怖感の慢性化ともいえます。この様に、脳がつくり出し、増幅させる痛みが心因性疼痛です。

心因性疼痛の痛みの増幅もまた、疼痛閾値の低下、そして痛みの増大といえます。

痛みと共に恐怖を感じる事は致し方ない事ですが、痛みに対して、情動的に過敏にならない様にコントロールする事が、痛みの増幅や、無いはずの痛みをつくり出す事への予防として有益に働くでしょう。

ゲートコントロール

身体の状態によって変化する疼痛閾値。その詳細をお書きします。痛みの元となる侵害刺激の他に、光、音、匂い、味、等の外部から感覚神経に入力される様々な刺激があります。光の刺激は視覚の元、音の刺激は聴覚の元、匂いの刺激は嗅覚の元、味の刺激は味覚の元です。そしてつねられた刺激は痛覚の元です。

さて痛みの元である、侵害刺激の電気信号と一緒に、脊髄神経を通り脳へ向かう刺激の信号があります。「熱い」とか「冷たい」という温度感覚の元となる信号です。温度感覚の元となる刺激を受け取るセンサーも、知覚終末の温点、または冷点で、温点、冷点に入力される刺激もまた、侵害刺激であるともいえますが、ここでは便宜的に温度刺激とします。

さて、電気信号が感覚神経を通るに当たって、神経には許容量があり、感覚神経を通じて電気信号を受け入れるに当たって、脳にも許容量がある為、脊髄神経の中に、電気信号の量をコントロールするゲートがあります。救急車両を先に通して一般車両は止められる交通整理の様なイメージです。侵害刺激と温度刺激では、比較的、温度刺激が優先される為、侵害刺激は一部ストップされる事になります。侵害刺激は、痛みの元となる信号ですから、結果的に痛みのレベルが下がる事になります。これが「ゲートコントロール」です。炎症は別として、お風呂に入って温まると痛みが和らいだ経験などがあるかと思います。

さてゲートコントロールでは、侵害刺激が途中で一部ストップされる事により、実際には侵害刺激の信号量が下がる訳ですが、侵害刺激と神経の許容量との比率で考えると、疼痛閾値が上がると捉える事も出来ます。いずれにせよ、痛みのレベルは下がるという事になります。

プロプリオセプターとプロプリオセプション

自己の身体が自己の身体であるという感覚を「プロプリオセプション」といいます。固有覚という意味ですが、立体感覚と捉えた方がわかりやすいと思います。また、各関節の位置、動きを認識する位置感覚でもあります。もし立体感覚、位置感覚が無くなったとすると、自己の身体の存在を認識出来なくなります。立ったり歩いたりする事は出来ません。生きていく為に必要不可欠な感覚です。この立体感覚、位置感覚であるプロプリオセプションのセンサーが固有感覚受容器「プロプリオセプター」です。このプロプリオセプションの信号も、侵害刺激と共に脊髄を通り脳へ向かいますが、プロプリオセプションは脊髄のゲートで最も優先的に脳へ送られる為、ゲートコントロールによって侵害刺激を一部ストップさせる為には非常に有効です。

プロプリオセプターは、骨と骨を連結している袋状の軟部組織である関節包に密集しています。中でも背骨の関節である脊椎関節の関節包には特に密集しています。つまり、脊椎関節を含む関節が固まって、動きが低下した状態では、関節包内にあるプロプリオセプターが正常に機能しなくなり、また、プロプリオセプションも十分に入力されません。結果、プロプリオセプションの信号量が下がり、侵害刺激が脳へ上がりやすくなります。疼痛閾値は下がり、痛みの感受性は上がってしまいます。ですので脊椎関節を含めた関節の固まり、動きの低下は、今ある痛みを増大させてしまいます。

ここで必要となるアプローチは関節の固まり、動きの低下を解放し、機能を改善させる事です。また筋肉も連動して、アンバランスな状態で、固まっていますから筋肉へのアプローチも必要です。この様な筋関節機能不全の解放と機能回復は、同時に、今ある痛みを軽減させる上でも重要なアプローチとなります。

関連痛

関連痛とは侵害刺激が入力されている場所とは、違う場所に出る痛みの事をいいます。例えば筋肉の内部に出来る局所的に収縮している場所が、侵害刺激の入力されている場所となり、脳に伝わり、脳は侵害刺激を痛みに変換します。そして通常であれば侵害刺激が入力されている場所が痛いと、痛みの場所も同時に認識します。この一連のやり取りの中で、脳が場所の指定を間違える事があります。複雑に無数に分岐している神経の突端である知覚終末から送られてきた侵害刺激が、どこから送られてきたのか?わからなくなり脳が場所の指定を間違えてしまうという説がありますが、結果、筋肉の局所的な収縮ポイントに侵害刺激が入力されている場合とは、別の場所に痛みが飛びます。筋肉の収縮ポイントをトリガーポイントと呼び、別の場所の痛みが関連痛です。トリガーポイントとは、痛みを飛ばす引き金点という意味です。足をつねられたら腰が痛いという事は、普通は無いですが、足の筋肉に出来るトリガーポイントの中には、腰に痛みを飛ばすトリガーポイントがあります。

また関連痛を飛ばす部位としては、内臓が挙げられます。通常、内臓の感覚は殆どありません。例えば、肝臓が動いていると感じる事は出来ないでしょう。内臓に侵害刺激が入力された場合も、どこが痛いのかを脳が正確に認識する事は困難です。これは例えば皮膚や身体の表層と比較して、内臓は感覚神経の神経支配が圧倒的に少ないからです。ですので例えば、肝臓の関連痛が右肩の痛みとして出たりします。筋肉や内臓の関連痛を考慮すると、痛みがある場所に原因が無い事が理解して頂けたかと思います。アプローチする場所は侵害刺激が入力されている場所。或いは、その根源的な原因となっている場所、状態を分析してアプローチする必要性があります。

痛みのメカニズムは実際には、更に複雑奇怪ですが、追及し過ぎると難しくなり把握しきれなくなると思いますので、ここに挙げてみました

 

痛みのセンサー

「知覚終末」「感覚神経の被覆の損傷箇所」「感覚神経の切断箇所」

 

痛みの元となる刺激

「侵害刺激」

 

侵害刺激が脳で変換された痛み

「痛覚」

 

痛みの感度

「疼痛閾値」

 

痛みの種類

「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「心因性疼痛」

 

痛みを増大させるメカニズム

「感覚神経の知覚過敏」「負の情動」「筋関節機能不全」

 

痛みを減少させるメカニズム

「情動のコントロール」「ゲートコントロール」

 

入力された侵害刺激の場所と異なる場所に現れる痛み

「関連痛」

 

を把握して頂ければ十分であると考えます。

以下のコンテンツ名をクリックして、各種症状についてご覧頂けます。

⇩⇩⇩ トップページへ ⇩⇩⇩