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肩こり

肩こりの原因、アプローチについての事例をいくつか挙げてみます。

肩もみと押圧

こりとは、筋肉が固まって毛細血管を圧迫し、血流が悪くなり、疲労物質や、発痛物質が溜まり、重だるいような疲労を伴った、鈍い痛みを出している状態です。大体、この様な事を見聞し、実際にこの様な感覚になるのではないでしょうか。肩こりであれば、重だるい痛みは、肩に出ますし、結果、その場所が辛いから、その場所を揉む、という事になると思います。そして、実際に、肩もみしてみると、例外もありますが、ガチガチに固まっているでしょう。肩こりがあって、その場所は固まっているから、揉んでほぐそうという試みです。結果的には、揉んでいる時は気持ち良い、或いは痛気持ち良い感覚があるけれど、実際には、ほぐれない状態。そして時間差を於いて余計に痛くなってしまったという状況。このケースでは、固くなっている筋肉を揉んだり、押したりしても、ほぐれずに、筋繊維や毛細血管、それから神経も含め、固まった組織を物理的に損傷させてしまい、その後、軽い炎症が起こり、余計に痛くなってしまうという現象です。炎症の起こる原因の1つは、損傷した組織を早くつくり治す為です。

肩こり等への強圧

肩こりなど、こりのある筋肉への強圧による、揉んだり、押圧したりするアプローチでは、筋肉や筋膜の、組織の破壊が大きく、炎症と、炎症による痛みも大きく出やすいでしょう。これが有害な意味での、揉み返しです。強圧によって、揉まれたり、押圧されたり、を繰り返すと、筋肉は、固く繊維化して、伸びにくく疲れ易い筋肉となってしまうでしょう。そして筋肉を包んでいる膜組織である筋膜は、肥厚(ひこう)といって分厚くなってきます。圧に対する防御反応です。この分厚くなった筋膜の鎧によって、外部からの圧に鈍感になっていきます。強圧で、揉まれたり、押圧されたり、という事が好きで、それらを繰り返すクライアントさんが、感覚的に効かないから、もっと強く揉んで欲しいと、訴えるシーンは多いと思います。また、強圧を欲する原因としては、こり固まった筋肉を、揉んだり、押したりする時、独特の痛気持ち良さと共に、脳内麻薬が出ます。するとこの感覚を、また欲するという一種の麻薬性があります。この様な強圧による痛気持ち良さを要望し続けるクライアントさんに、提供し続けるセラピストさんは、それらを満たす事が目的であれば、それは自由であると思いますが、筋肉、筋膜、そして身体にとっては有害となってしまうでしょう。

肩こり等への弱圧

また、肩こり等、こりのある筋肉を、揉んだり、押圧したりするアプローチでは、必要最低限の圧によって、ごく顕微な損傷と、ごく軽い炎症と、それによる新陳代謝の加速を誘発させて、古い筋肉組織を壊し、新しい組織につくり替える為の目的で行われる事もあります。この時、筋肉の収縮と弛緩に必要な機能を備えている筋小胞体(きんしょうほうたい)もつくり替えられます。筋肉の収縮にはカルシウムイオンの放出が必要で、筋肉の弛緩には、カルシウムイオンの回収が必要ですが、このカルシウムイオンを蓄積している袋であり、必要に応じて放出、回収を行っているのが筋小胞体です。筋小胞体が壊れ、中にあるカルシウムイオンが流出すると、その周辺の筋肉は持続的な収縮状態になります。この機能しなくなった筋小胞体を新しくつくり替えるという事で、持続的な収縮を解放する事になります。この様な目的で、必要最低限の圧によって、揉んだり、押圧したりするアプローチは有益に働くでしょう。ただし別のアプローチ方法もあるので、必須のアプローチという訳ではありません。

肩こりの症状を起こす筋肉と原因となる筋肉

こり固まった筋肉を解放する為、アプローチする場所の選定も重要です。重だるさを伴った痛みの症状を出している場所と、原因となっている場所は違っている事が多いからです。肩こりの症状を出している場所は、上部僧帽筋の中の一部でです。筋肉は、一方が縮むと、もう一方が伸びる、拮抗関係を持った一対で、関節をまたぎ、骨に付着しています。肘で例えてみますと、肘を曲げるのは上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)で、力こぶをつくる筋肉です。この上腕二頭筋が縮む動力で肘は曲がります。一方、その背面側にある上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)は伸びています。この時、上腕二頭筋を主動筋と呼び、上腕三頭筋を拮抗筋と呼びます。逆に肘を伸ばすのは上腕三頭筋で、上腕三頭筋が縮む動力で肘は伸びます。そして、一方の上腕二頭筋は伸びています。この時、上腕三頭筋を主動筋と呼び、上腕二頭筋を拮抗筋と呼びます。縮む筋肉を主動筋とした時に、結果的に伸びる筋肉が拮抗筋となります。この2つの筋肉には拮抗関係があるという事です。拮抗関係は、筋肉の配置によって、同じ関節の表と裏に存在する、よりダイレクトな拮抗関係と、別々の関節をまたぐ筋肉同士でも、連動する動きの中で、遠隔から間接的に拮抗関係にある筋肉同士も多数存在します。手技療法の目的の、筋肉のアンバランスで挙げた、上部僧帽筋と大胸筋の関係は後者に当たります。アプローチする場所は、拮抗関係にある筋肉の縮んで固まっている側となります。詳細はトップページに記述しましたが、もう一度補足をしておきますと、筋肉のアンバランスとは、歪んだ関節をまたぐ拮抗関係にある筋肉の、一方が、縮んで固まっている短縮固着(たんしゅくこちゃく)となり、もう一方が伸びて固まっている伸長固着(しんちょうこちゃく)となっている状態です。重だるさを伴った痛み等の症状を起こし易いのは伸長固着している筋肉で、その原因となっているのは短縮固着している筋肉である事が多いという事です。

肩こりと僧帽筋の伸長固着

大胸筋の他に、肩こりの原因となっている筋肉は、顎の筋肉である咬筋(こうきん)、鎖骨の下にある鎖骨下筋(さこつかきん)、大胸筋の奥にある小胸筋(しょうきょうきん)等があります。いずれの筋肉も短縮固着となり、上部僧帽筋を伸長させて肩こりを引き起こす原因となる事が多いです。また、僧帽筋は表面積が大きく、同じ僧帽筋でも、両肩を結ぶラインよりも下部にある下部僧帽筋は、上部僧帽筋を引っ張る拮抗関係にあります。しかし下部僧帽筋は短縮固着ではなく伸長固着となっている事が多いです。この下部僧帽筋が引っ張られて伸長固着となっている原因が別にあります。それが広背筋(こうはいきん)の短縮固着です。広背筋は、腰、背中、脇腹にかけて付着する大きな筋肉です。上部僧帽筋を引っ張っている原因が下部僧帽筋。下部僧帽筋を引っ張っている原因が広背筋です。このケースでは原因の原因が、一次的な原因という風に2段階の繋がりで原因に辿り着いていますが、この様に症状を出している筋肉の原因となる、拮抗関係の筋肉の短縮固着は、直接的であったり、多段階的であったりします。そして、それらの原因が、単体であったり、複数存在していたりします。

少し複雑でややこしいですが、要点は、症状を出している筋肉が伸長固着であった場合、その筋肉と拮抗関係にある筋肉の短縮固着が原因となる事が多く、その場合、短縮固着を解放する筋膜リリース等のアプローチをするという事です。

また、ここでは肩こりをモデルに、症状を出している伸長固着している筋肉と、その原因となっている拮抗関係にある筋肉の短縮固着について、お話ししましたが、これは肩こり以外にも、他の部位で起こる、こりについても当てはまる関係性です。

肩こりと斜角筋

肩こりを訴えるクライアントさんで、僧帽筋の肩もみする場所を触診してみた時に、柔らかい方もいらっしゃいます。このケースで多くの場合、短縮固着している筋肉の1つに斜角筋があります。斜角筋は、第2頚椎から第6頚椎と、第1肋骨、第2肋骨に付着しています。大まかに首の外側から斜め前側にかけて付着し、動きとしては頚椎の側屈と屈曲になります。頚椎の側屈とは、首を横に倒す動きで、屈曲とは、前に倒す動きです。また意識し辛いと思いますが第1肋骨と第2肋骨を引き上げる機能があり、斜角筋が短縮固着する事によって中立位置が、本来の中立位置でなくなってしまうと、第1肋骨と第2肋骨が引き上げられた状態となり、第1肋骨、第2肋骨の中立位置もまた、本来の中立位置では無くなってしまいます。第1肋骨、第2肋骨は上から1番目と2番目の肋骨です。

この斜角筋の短縮固着と第1肋骨、第2肋骨の位置異常、つまり変位によって首の外側から前側にかけてと、胸の前面の上部の辺りが窮屈な状態となります。また斜角筋の関連痛としては、肩甲骨の内側に重だるい痛みを飛ばします。

そして、鎖骨と第1肋骨、第2肋骨の間を通って首と腕を繋ぐ、腕神経叢(わんしんけいそう)や鎖骨下動静脈を圧迫して、腕の痺れや疲れと共に肩こりの症状を引き起こします。これは厳密には肩こりの類似疾患で、胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)といいます。胸郭出口とは、鎖骨と第1肋骨、第2肋骨の間の空間の事です。

肩こりと横隔膜

斜角筋の短縮固着は、斜角筋への直接的なアプローチでは緩みにくい筋肉であり固着です。例えば首を横に倒して手でサポートしながら行う斜角筋のストレッチを試みた時には、斜角筋以外の筋肉が先に伸び切ってしまう為、斜角筋に十分にストレッチを掛ける事が出来ません。また無理に行うと別の筋肉を傷める事となったり、頚椎を痛める事になるリスクとなります。加えて、斜角筋の短縮固着は、別の原因によって起こっている為、斜角筋への直接的なアプローチでは緩みにくいのです。

肩こりの原因として斜角筋の短縮があり、斜角筋の短縮の原因が別の所にあるので、肩こりの原因が見えにくいといえます。

斜角筋の短縮固着の原因は腹部の、特に深部にあります。1つピックアップしてみますと横隔膜です。酸素の供給と二酸化炭素の排出を行う為の理想的な呼吸は腹式呼吸です。腹式呼吸は横隔膜の上下動を生かした呼吸法です。心身共にリラックス状態である副交感神経優位の状態で呼吸は腹式呼吸になります。横隔膜は肋骨の下部の辺りで胸の空間の胸腔と、お腹の空間の腹腔を仕切っている膜組織です。逆に心身共に緊張状態である交感神経優位の状態で呼吸は胸式呼吸となります。胸式呼吸は横隔膜の上下動を使わずに、外肋間筋と内肋間筋を使って胸郭を広げたり狭めたりする呼吸法です。胸郭とは肋骨がつくる鳥籠状の空間です。

肩こりと呼吸法

前項で記述しました様に、神的ストレスの持続などによって、交感神経優位、胸式呼吸になり易く、そうなると横隔膜の動きが無くなって、横隔膜の機能低下、固着となり、それが斜角筋の短縮固着となり、肩こりを自覚し易くなるという流れです。ですので斜角筋の短縮固着によって自覚する肩こりは、精神的なストレスから来る事も多いといえます。日常生活でのアプローチでは、腹式呼吸を心掛ける事によって、横隔膜の上下動を生かし、それによって斜角筋の短縮固着、そして肩こりを解消する事が出来ます。

腹式呼吸による肩こりの緩和と、心身への有効性

腹式呼吸の有効性に着目しますと、例えば、腹式呼吸から、副交感神経優位へと誘導し、精神的ストレスを緩和する方向へと誘導する事も出来ます。副交感神経は自律神経であり、自律神経は不随意の神経であって意識的にコントロールする事が出来ませんが、呼吸は意識的な運動である随意運動と、無意識の自動運動である不随意運動を兼ねていますので、随意運動として意識的に呼吸をコントロールする事で、無意識の自動運動である不随意運動、そして不随意運動の電気回路である自律神経をコントロールする事が出来、また精神面でのコントロールも可能となります。

斜角筋の短縮固着に起因する肩こりでは、直接的に緩みにくい斜角筋を、副交感神経優位、精神的ストレスの解消という面からの解放を誘導し、肩こりを緩和させるという効果もあります。

また、肩こりの緩和に限らず、腹式呼吸は、横隔膜の上下動や、不随意の自律神経を通して、身体的な緊張と、精神的な緊張の、両方を緩和させていく事が出来ます。また、呼吸は生きていく為に常時行わなくてはいけない営みであるので、この呼吸を腹式呼吸に変えていく事は、オンタイムのセルフケアを常に行っている状態に出来る万能的な方法でもあります。

肩こりと斜角筋、第1肋骨、第2肋骨へのアプローチ

既述の様に斜角筋の短縮固着と第1肋骨、第2肋骨の変位は連動します。第1肋骨と第2肋骨が変位と共に固着状態にありますと、斜角筋の短縮固着が解放されても、第1肋骨と第2肋骨の変位、固着は解放されません。この状態は早い段階で、また斜角筋の短縮固着の発症となり得ます。

手技による第1肋骨と第2肋骨へのアプローチは、カイロプラクティックのアジャストや、モビリゼーションによる矯正です。場合によっては鎖骨や、第1胸椎などの変位、固着の矯正も必要となります。

また、手技により斜角筋の短縮固着を解放する為、腹部の、特に深部へのアプローチも有効です。例えば、隔膜テクニックによる横隔膜の捻じれ、固着の解放のアプローチなどです。また、隔膜テクニックにより、胸郭出口の隔膜に対する、捻じれ、固着の解放のアプローチも斜角筋の短縮固着の解放に有効です。この辺りはオステオパシーになります。

また斜角筋自体を効果的に緩めるテクニックもあります。例えばマッスルエナジーテクニック、METにより、斜角筋の筋腹の力みを取り、短縮状態を解放する方法です。METは力みの取れない筋肉に対して特に有効です。これもオステオパシーになります。METは工夫する事によりセルフケアとして有効的に行う事が出来ます。ただし、ここまで記述してきました様に斜角筋以外の原因が解消されている事が必要であり重要です。

この様に、肩こりに対して、別の部位にアプローチする事は不思議に思われるかもしれませんが、むしろ多くの場合、肩こりに対して肩もみをする事の方が不思議であるといえます。

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